メルシー・ジズー

世界中で話題になっているジダンの頭突きですが、昨夜、ジダンがテレビでインタビューに答えていました。内容は、いろいろなニュースで伝えられている通りですが、彼が一番言いたかった事は、サポーター特に子供たちに、謝りたかったという事だったようです。
今回の件、さすがに驚きましたが、それより、これからが大変でしょう。
ご存知の通り、フランスはかなり昔から北アフリカ系の移民が多い国です。もちろん貧富の差や差別もあり、たくさんの人がそれと戦ってきています。ジダン本人も差別と戦うといったコマーシャルで出ているほどです。
最近になって、ますます移民が増えて、スペインやイタリアにたくさんの人がアフリカから流れ込んでいます。各国政府やEUもその対応に苦慮している現状です。また東欧からも入ってくる人も多いので、移民は欧州各国の共通の問題なのです。移民がすでに多いフランスはともかく、イタリアやスペインは、アフリカに近い事もありたくさんの移民が流れ込んで、対策が難しいようです。急激な移民の増加は、住民感情に良いはずもなく、差別的な事があったり、極右への支持があつまったりするのです。イタリア人同士では気にならない言葉も、アフリカ系移民には心に突き刺さる言葉があるのです。フランス、特に南仏は、昔から北アフリカ系の人達が多く、それを肌で感じる事も少なくありません。そんな背景が、「今回のジダンの行為は許されないが理解できる」と言う事なのだと思います。
もう一つ、この件が、今の世界を表しているような気がします。
イタリアのマテラッツィ選手は、勝つためにこの暴言を吐いたのでしょうが、勝つためには何をしても良いという風潮があるのは事実と思います。サッカーも勝つために荒いパワーサッカーが増えてますし、イタリアのクラブチームなどでは、極右(ナオナチまでも)動員して有色人種廃絶をスタンドで訴えたりしています。
勝ち組み負け組みなんて言葉がでたりしていますが、企業も勝つためには、なんでもありと言う感じです。例えば、お菓子やヨーグルトの大企業ダ〇ンは、フランスの景気の良いときに上げた利益で工場を東欧に移転しました。フランスでも利益が上がるのに、もっと勝ちたいからと言う理由です。近年たくさんの企業が東欧などに工場を移転していて、フランスやドイツなどの失業率が上がっているのです。生き残りの為と説明していますが、あの莫大な利益をそれだけで説明できるのでしょうか?また、失業者が多いのは、移民が多すぎと言う人がいますが、実際に肉体労働には求人を出しても人が集まらないのが現状なので、その意見も間違いと思っていいでしょう。お金のある人は、もっとお金持ちに、貧しい者はいつまでも貧しくというのが、現在の社会構造になっているのです。
ブログやソーシャルネットなど個人が気軽に発言できる場が増えていますが、そういった所でもちょっと強い立場の人が、弱い立場の人を攻撃したりバカにすることで支持を得ようとするのを見かけます。それも同じ構図のような気がしてなりません。
時に言葉の暴力は、実際の暴力以上に人を傷つける事になるのは言うまでもありません。特に人種差別などは許されるべきではありまえん。と言ってもジダンの行為を正当化するつもりありませんので、念のため。
そんな負け組みの貧困層から、実力のみで這い上がったジダンの今回の一件。そして昨日のインタビュー。彼は、相手への非難ではなく、サポーター達、特に子供たちに謝りたくてテレビに出演したのが伝わるコメントで、その気持ちは、たくさんのフランス人の心に伝わったのではと思います。
メルシー ジズー
(ジズーはジダンの愛称です)
by A110ALPINE
| 2006-07-13 04:23
| ひとり言